焼肉屋で黒毛和牛のA5をうたっている店を見ても全然食指が動かないのですが、世の中的にはA5表記を重視する人は一定数いるのは否定しません。
しかし、そんな方々がその焼肉屋において「タンやハラミが好物!」と、それらの部位を食べまくっているのを見ると、なんだかなーと思ってしまいます。
なぜなら、黒毛和牛のA5とその店で使用されているタン・ハラミはほぼ関係ないからです。
皆さんは流通におけるタン、ハラミの国内産の供給量を知っていますか?
それは実にタン約3%、ハラミ約8%と恐ろしいほどの低い率です。
つまり、ある一定の料金を出さないと国内産の、しかも黒毛和牛のタン、ハラミは食べることができません。
もし焼肉屋で黒毛和牛のタン・ハラミと出会うことができたら本当に貴重なタイミングですので、絶対に食べておきましょう。
まず覚えておきたいのはタンとハラミはほぼ輸入という事実
少し古いデータですが、平成30年の農林水産省のデータを見てみると、タンとハラミはほぼ輸入であることがわかります。
データを見れば一目瞭然で、国内産のタン・ハラミは希少部位であることがわかります。
このデータは国内供給量ということですので、さまざまな牛のタン・ハラミの合計値で3%、8%程度となっておりますので、
和牛のタン・ハラミとなるとさらに低い数値になると考えられます。
昨今、さまざまな部位を「希少部位」として売り出すお店が増えましたが、本当の希少部位と呼べるのは和牛のタン・ハラミといえます。
なぜなら全然流通していないから。
牛から取れる割合的にもタンとハラミは希少部位
そもそも論ですが、なぜ海外からの輸入が多いかというと、国内の需要(消費量)に対して、国内産の供給量では全く足らないことも大きな要因となるわけです。
なぜ供給量が少ないかというと、牛一頭から取れる量がカルビやロースなどに代表される正肉(いわゆる赤い肉たち)に比べ、タン・ハラミは取れる絶対量が少ないからです。
出典:畜産の情報 2018.7
これも古いデータですが、データ取得年によって牛の体の構成比率は変わりませんので、気にせず見てみます。
このデータは牛一頭から取れる各部位の重量とそれが全体に占める割合を求めた表です。
タンは全体に対して「0.38%」
サガリは全体に対して「0.19%」
ハラミは全体に対して「0.25%」
となっています。他のデータをみると正肉部分は33%ほどといったデータもありました。
それと比較すると、やっぱりそもそも取れる量が絶対的に少ないことがわかります。
牛の構成比率でみても、タンとハラミは希少部位中の希少部位といっても過言ではない部位なんです。
焼肉屋に入ってくるタンとハラミは価格の関係で輸入ものが多い
私は愛してやまない焼肉ですが、同じ肉料理というカテゴリーでみると比較的安価なお店が多いように思います。
元々大衆料理として広まっている庶民の食べ物ですから、普段の食事より高額ではありますが、それでも鉄板焼き、ステーキ、肉割烹などといった他のライバル店に比べると料金は平均的に安いはずです。
消費者側の支払金額が少ない=客単価が安いわけですから、当然仕入れに使える金額も他のライバル店に比べると低くなることは想像に難くありません。
↑客単価3万こえるような肉割烹などだとやっぱり仕入れに使えるお金が違う
このような条件下で、貴重な貴重な和牛のタンとハラミを仕入れようと思っても経済合理性から考えると無理な話で、やっぱり良い品はもっと単価の高い店に流れることが多いです。
つまり、焼肉屋で和牛のタンとハラミを食べようと思うと、かなり難しい状況が
所与の条件としてあるといえます。
中国に買い負けてさらに状況は悪化している可能性が高い
さらに状況は悪化しています。
2010年前後からでしょうか?中国の方たちもタン等のおいしさに気づき自国で輸入して消費することも増えてきました。
なにぶん人口も10倍以上、そしてGDPも抜かされていますので、簡単に言うと消費量も半端なく、そして相手の方がお金を持っている。
買い負けてしまうことが多くなったようです。
他の要因も絡み合い、タンなどはアメリカからの輸入価格も高騰しており、安価な焼肉という食べ物においてはダブルパンチで痛い状況なのです。
出典:ワールドビジネスサテライト
お金だけではない仕入れの世界 ある店にはあるのでご安心を
なかなかお目にかかることが無い和牛のタンとハラミ、そしてお金的には不利な焼肉業界ですが、それでもあるところにはあります。
なぜならお金があっても信頼が無いと仕入れることができない状況があるからです。
この辺りは私は飲食業界・食肉業界にいないので深いところまではわからないのですが、各飲食店で教えてもらった話を統合すると、やっぱり仕入れってお金だけじゃなくてこれまで積み上げてきた信頼が重要。
信頼できるところとの関係性のなかで成り立っているようです。
ということであるところにはあります。
取れる量も少なく、海外にも人気で、ライバル店と比べても仕入れにくくなっている和牛のタンとハラミは、本当に貴重なモノ。
焼肉屋で出会ったら「奇跡」と捉え、注文はマストと考えておくと良いと思います。